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■ 少年・少女の非行の現状 | |
今日は、深夜の繁華街のパトロールを通じて若者の非行防止と更正に取り組んでおられる、「夜回り先生」と呼ばれている高等学校教諭水谷修先生が行った講演内容をもとにしてお話しいたします。 2000年頃から第四次少年犯罪多発期に突入したと言われています。第四次の特徴を5つあげると、その1、軽犯罪が非常に増加している。その原因は、ものを考えられない子どもたちが育っている。家庭では、お母さんにコミュニケーションをするゆとりがないため、子どもに一方通行のビデオ、テレビ、テレビゲームをさせるだけ。学校でも、行事が多くてゆとりがなく、先生の言うがままに動くしかない。そこで、考えることのできない子どもたちが、周りにならってファッション感覚で軽犯罪に手を染める。それと、日本国民全体の規範性が落ちている。第四次の特徴のその2、性非行・性犯罪がすごい勢いで増えている。子どもたちが読んでいる漫画の性描写、女性の描かれ方のひどさ。漫画の影響で非行少女ほど男につくしてボロボロにされている。子どもたちは、昼の社会で「産まなきゃよかった」「学校に来なくていい」と徹底して疎外されている。その一方で、夜の街は非常に優しくそれに引っかかる。体を売る女の子の七割以上が「今はお金だけど、最初は違った。優しくして貰えたから。」と言うそうです。その3、女の子の犯罪が非常に増えている。男の子はダラダラと崩れていくが、女の子は最初の壁は高いが、一挙に落ちていく。女の子の非行・犯罪の増加を防ぐには、最初の壁をどれだけ高くするかに掛っている。その壁は「愛」で、「子どもは受けた愛の数が多ければ多いほど非行から遠ざかり、受けた愛の数が深ければ深いほど非行に入っても傷は浅い」。その4、凶悪犯罪と異常犯罪が増えている。人は自分が所属する社会で人と触れ合ってこそ不安がなく生きていける。それが人と触れ合うことができなくなったとき、どんどん病んでいく。自分を責め、社会を恨み、これが爆発したとき、凶悪・異常な犯罪が産まれる。そして現在、日本では13万人の不登校の子どもと、30万人の引きこもりの子どもを抱えている。この子たちの居場所をつくるべき。居場所がないことが、引きこもり、不登校の元凶になっている。その5、薬物乱用。日本の薬物乱用の歴史の中で初めて十代の子どもたちに組織的に覚せい剤などの薬物が流れたため、1998年、第三次覚せい剤乱用期宣言が出された。若者はグループで動くことが多いので、一人が薬物にはまると一挙に全員に広がる、と言っています。 国連の子どもの権利条約は素晴らしい条約ですが、少年非行予防のための国連ガイドラインも素晴らしい。この文書には、人権を侵害されてきた子どもたちがSOSとして発するのが少年非行であり、少年非行を予防するのであれば、幼いときから子どもたちの人権を保障することが一番確実な方法であると書いています。 私の司法修習時代のクラスメイトである野口善國弁護士は、1997年の神戸連続児童殺傷事件の付添人をするなど少年の刑事事件や非行事件の弁護を通じて非行少年の更正に尽力していますが、彼は非行少年の実像を、世間の常識と違って甘やかされてきたから罪を犯すのではなく、親から愛された体験をもたないがゆえに自分や他人を愛する感情が育っていないから凶悪な事件を起こすと主張し、少年たちの非行を防ぐのは罰ではなく、「愛」、とりわけ親の愛情であると主張しています。 もう1つ、同じく私の司法修習時代のクラスメイトである坪井節子弁護士は、NPO法人カリヨン子どもセンターの理事長として少年の非行や虐待問題に取り組んでいますが、彼女は非行少年の子どもたちにいつも3つのことを伝えていると言っています。1つ目、「あなたが生れてきて良かった」。欠点も矛盾も問題もたくさん抱えているけれども、ありのままのあなたがいい。2つ目、「あなたの人生の主人公はあなた」。あなたが考えて選んで歩き出してごらん。失敗して転んでもいいんだよ。3つ目、「ひとりぼっちではない」。他人の人生を解決することはできないが、私はあなたと共に生きて共に歩いていくことができる、と。子どもたちを理解しようと寄り添ってくれる大人を、子どもたちは信用するのではないでしょうか。 ご紹介した3人の言葉と、少年非行予防のための国連ガイドラインの言葉から、皆さんは若者の非行について何を、どう感じられるでしょうか。 |