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■ 繁栄の外に追いやられて生きている若者たちが増えている | |
社会から切り離される「社会的排除」の行き着く先は社会的孤立である。この社会的排除に対抗するためには「社会的包摂政策」への転換が必要であるとお話ししました。本日は、繁栄の外に追いやられ、社会の周縁や底辺で孤立して生きている若者たちに焦点を当てたいと思います。 「ドキュメント高校中退」(ちくま新書)を著された青砥恭(あおとやすし)氏によると、学校から排除され中退する高校生は毎年10万人にも及ぶが、高校中退者は就職が困難で、社会の繁栄から取り残され、社会の最底辺層を形成し、且つその層が積み重なっていっているとされています。このような若者は、深刻な貧困家庭で育ち、貧困な親は、親自身が生きていくのに必死で子どものことをかまう余裕がなく、生活に疲れ果てて子育てに意欲を失い、子どもたちの発達に悪い影響を与えている。子の貧しさは遡って親の代から続いているということです。 親の経済力と子どもの学力には強い相関があり、経済力と連動した学力格差は90年代以降急激に拡大し続けています。貧困層の子どもたちは、拡大する格差の中で、学ぶ意欲を失い、学びの場から離脱していく。そして学校の荒廃を引き起こしている。しかも彼らは行政的な支援もないままに如何なる社会資源とも結びつくこともなく孤立し周縁化して繁栄の外に追いやられて生きているのです。 少年院生たちが非行をするに至った原因と、家族の特性との関についての調査記録を見てみますと(「非行化の危険因子に関する累積的相互作用の検討―発達的・小児期逆境的・家族的特性の調査」松浦直己)、「身体虐待」を体験した高校生の平均は1%に対し、少年院生は21・5%。以下同様に「家族が酒・薬物依存者」については2%に対し21.4%、「母親の暴力」を体験したのは2%と18.1%、「刑の服役者が家族にいる者」は0.0%と9.1%。このように比較してみると、高校生の平均と比べて、少年院生たちは如何にハイリスクな家族環境の中で育ったかが見えてきます。「ひとり親又は不存在」は7.1%に対し50.3%。中学生の子を持つ生活保護世帯で母子家庭が占める率は80%を越えている。ひとり親世帯の95%を占める母子家庭の平均年収213万円(2005年)は、全世帯平均の563万8800円の37.8%でしかない。200万円以下世帯が70%。日本の子どもの貧困は母子世帯の貧困とも言えるということです。 では、社会的排除を受け、社会的周縁化する若者たちを生まないようにするには如何にすればよいか、そして現に存在するこのような若者達をどのようにして社会に迎え入れるか、所謂「社会的包摂政策」をどのように進めるかが大きな課題です。 若者の周縁化の原因は、生れて以降どこからもサポートされず、長期間放置された結果です。出産から養育の過程では、母親を孤立させない施策と、就学前教育が重要です。また、このような若者たちに、社会性とか、日常生活での生活習慣を含めた自立に繋がる技術を身に着けさせることが必要で、そのためには、学校教育の場ではこのような子どもたちの「居場所づくり」をすること、中退を防ぐためには学校に「学び直し」の機能を持たせることが必要です。それとともに学校は「教育から就業に繋げる方策」を考え出すことが必要で、そのためには、普通科教育に偏することなく、地域の産業と関連性の強い技術を重視した職業教育が必要です。このような職業教育には、第一線から身を引いた団塊の世代の方々に奉仕活動を行っていただければと期待するところです。堺屋太一の小説「団塊の世代」に、高い知識や技術を持つ団塊の世代は、年金があるので高い給料を支払わなくてもすむ、社会的資源として大いに活用すべきであると書かれておりますが、私も大賛成です。 若者達を社会的に排除しない「社会的包摂政策」を行うには、学校だけでなく、福祉機関など行政や地域がお互いに役割分担をしながら共に若者たちを守るセーフティーネットワークを構築していくことが大切だと思います。 (この原稿を作成するにあたっては、同氏の人権のひろ場82号・85号の論考を参考にさせていただきました。) |