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■ 第32回全国中学生人権作文コンテスト

 先の12月1日の土曜日,「第32回全国中学生人権作文コンテスト」伊丹地区大会の表彰式があり、私も出席しましたのでこのことについてお話します。
 その前に、あまり知られておりませんので人権擁護委員について少し説明いたします。
 人権擁護委員とは、人権尊重思想の普及と高揚を図り、人権侵害による被害者を救済し、人権を擁護する活動を市町村の区域で行う目的で、法務大臣が委嘱した公職の民間ボランティアのことです。昭和23年に国連総会で採択された「世界人権宣言」の理想を受けて、昭和24年にできた諸外国にもその例を見ない制度です。しかし、最近では法務省とのつながりが強いことを諸外国から批判され、より独立性の高い人権組織に改変する方向での人権擁護委員法の改正案が何度か国会に提出されているのですが、政局の煽りを受ける等で未だに改正がなされていないのが現状です。平成22年4月1日現在、全国で約1万4000名(うち女性委員が約5900名)の人権擁護委員がおり、法務局・地方法務局の職員とともに、人権侵害事件の調査処理、人権相談、人権啓発活動などを行っています。 
 私は、平成6年に、神戸地方法務局伊丹支局管内の伊丹人権擁護委員協議会に所属する人権擁護委員に委嘱され、約20年間人権擁護委員として人権擁護活動に携わって来ました。冒頭の第32回全国中学生人権作文コンテスト伊丹地区大会の催しもその活動の一環として行われた行事です。
 神戸地方法務局伊丹支局が管轄するのは、伊丹市、宝塚市、川西市、三田市、猪名川町の4市1町ですが、その管内の公立中学38校と私立中学3校のうち、9割を越える38校から、1万7421編の作文の応募があり、その中から最優秀賞5名、優秀賞6名、奨励賞23名が選ばれました。
 教育委員会によって選別された後、人権擁護委員の審査まで上がってくる対象作文は、さすがにどれも素晴らしい出来です。選別し難いのは、鶴見ロータリークラブが行っている日本語作文コンクールの審査で皆さんが選別に悩まれているのと同様の難しさがあります。
 中学生人権作文の特徴をあげると、今年は大津事件があった影響だと思いますが、いじめに関する作文が多かったようです。また例年と同じく、本人が耳が聞こえない等の障害を持っているとか、兄弟が障害を持っているとかの子ども達の作文が選ばれる割合が高いように思います。もう一つ、作文に共通する特徴は、いろいろな障害を「その子の個性」ととらえていることです。人は皆それぞれ異なる特色の個性を持っている。ある人は他の人にはできないことができ、感じられないことが感じられるし、ある人は他の人ができることができないし、感じられない、でもそれは人それぞれの個性。自分がどのような個性を持っていようと、自分の個性は否定されたくない。同様に他人の個性も否定してはならないと理解しているようです。すばらしいことです。小学校から行われている人権教育を経て、このように理解できる中学生が育っているということは、まさしく学校現場における人権教育の成果です。 
 私は昨年の第31回表彰式の閉会の辞で、このようなすばらしい作文が書ける君たちと、君たちの同世代の中学生に、日本の将来を託したい。素晴らしい日本にしてくれることを期待していますと、挨拶を締めくくりました。
 このようなすばらしい人権作文を書いてくれた子ども達や、ミュージカル「明日への扉」を支えた若者達、東日本大震災の災害募金に少ない小遣いの中から募金を出してくれた中学生達、阪神淡路大震災や東日本大震災のときに活躍してくれたボランティアの若者達。これらの若者達は、私に、日本の若者達のすばらしさを実感させてくれますし、日本の将来に希望を持たせてくれます。