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■ 児童虐待を防止するために その2

 先日お話しした児童虐待の基礎知識および児童虐待を防止するための早期発見と親の支援への取り組みについて、更にお話しを続けます。

「要保護児童を養育する受け皿の充実」
 深刻な虐待のために、親にそのまま監護させることが不適当と認められる要保護児童を養育する受け皿を充実させる必要があります。
 それには児童福祉施設である乳児院や児童養護施設の充実が欠かせません。このための一方策として、国は「グループホーム」と「乳養相互乗り入れ」の施策を打ち出しています。@「グループホーム」。一般の住宅を借りて、子ども6人に職員を付けて共同生活をさせることを生活の基本形態とするもので、既に実現している所もあるようです。A「乳養相互乗り入れ」。せっかく慣れたのに見知らぬ施設に子どもを移すことがないよう、乳児や子どもの安定した生活環境や職員との濃密な人間関係を保障するために、2歳までが原則の乳児院でも小学校に入るまで預るとか、児童養護施設でも乳児を受け入れることが出来るよう相互乗り入れを目指していますが、実際にはまだ進んでいないようです。
 それとこれらの施設の人手不足が大きな問題です。児童虐待防止法ができ、児童相談所等の関係機関の努力の結果、21年連続児童虐待数過去最多更新という虐待児童の発見の掘り起こしがなされていますが、反面児童相談所では件数の多さに忙殺され個別ケースに丁寧に対応できていません。根本的な解決には職員の増員が必要です。人手不足は児童福祉施設でも同じことです。
 また、里親制度の充実も図られています。虐待などで心身に深刻な影響を受けた子どもを養育する専門里親の制度がつくられました。

「親の支援」
 子どもは、いずれは親の元へ帰りますから、適切な親子関係の再統合、良好な家庭環境での生活を保持するために親の支援が大切です。
親への支援のポイントとしては、@親を責めてはいけません。虐待している親は必要以上に強いプレッシャーを自分に与えている状態なので、そこに追い打ちをかけると、ますます親は追い詰められて問題行動がエスカレートしていきます。出来るだけ親と信頼関係を形成するかかわり方が必要です。
Aまた、虐待が治まって子どもが安心して親元に帰れる状況を作り出すことが必要ですから、そのために親への精神的な援助、カウンセリング、必要に応じた精神科的な治療が必要ですが、この部分がほとんど手つかずになっています。
「親権制度の改正」
 民法や児童福祉法中の親権制度が改正されました。
 親の親権に対する制限が強化されました。虐待を行った親が児童相談所等からの指導に従わない場合、親の同意がなくとも子どもの安全確保を優先し、職権による一時保護や施設への強制入所の措置を講ずることができます。親の同意に基づく施設入所の場合でも児童相談所長もしくは施設長は、子どもとの面会・通信を制限できます。
 また、今までの親権剥奪制度だけでは、効果が大きいため剥奪後の親子の再統合に支障をきたすおそれがありました。そこで親権剥奪に加えて、児童相談所長は、2年以内の親権停止や管理権喪失、又はこれらの取消申立ができるようになりました。更に、児童相談所長に一時保護の場合の監護・教育・懲戒に関する権限が、即ち児童福祉施設長や里親と同様の権限が付与されました。そして、児童相談所長・児童福祉施設長・里親が、その福祉のために必要な措置をとる場合には、親権者等は不当な主張をしてはならないし、緊急時には親権者等の意に反してこれらの措置を取ることができるようになりました。
 親権者がいない施設入所中の児童は施設長が親権を代行します。親権者がいない里親委託中や一時保護中の子どもは未成年後見人の選任で対応することになっていますが、未成年後見人確保が困難な現状から、親権を行使する者が出て来るまで児童相談所長が親権の代行ができるようになりました。
 一時保護は原則2カ月を越えることができませんが、第三者機関の意見を聞いて延長ができることになりました。
 最後に、児童虐待防止を担う各種機関は、固有の権限があると共にその権限に限界がありますので、連携が必要となります。このために、要保護児童支援ネットワークが、平成12年度から各市町村で築かれつつあります。
(この原稿を作成するにあたっては、朝日新聞の記事及び才村純氏と佐々木光郎氏の人権のひろば39号、79号の論考を参考にさせていただきました。)