先日の児童虐待の基礎知識に引き続き、児童虐待を防止するには虐待の早期発見と親への支援が必要ですが、このような取り組みについて2回に分けてお話しします。
<通告義務> 児童福祉法25条では、虐待が疑われたら通報する義務があります。あとで客観的には虐待の事実がなかったとなっても、通告が善意でなされる限り通告した人の責任は問われません。このような規定になっているのは、虐待でなかったら大変などと通告をためらわないように、子どもを虐待から救うために万全を期そうとしたものです。この通告義務は、医者や弁護士等の守秘義務よりも優先しますので、通告しても守秘義務違反になりません。
<児童虐待防止制度の仕組み> 児童福祉法25条の通告義務により、児童虐待の疑いがあると通告を受けた児童相談所は、情報を集め、安全確認のために速やかに子どもに会いに行きます。その結果、親元に置いておけないとなると、一時保護します。一時保護は、親が反対しても職権で可能です。子どもを保護したうえで、どんな処遇が適切かを判定します。 虐待の程度が軽く、親も児童相談所などの援助を受ける気持ちがあると判断される場合は、在宅指導の措置がとられます。虐待の程度が重い場合は、乳児院や児童養護施設等の児童福祉施設への入所措置などの親子分離措置という流れになります。
<虐待の予防と支援> 「誕生前の支援」 虐待死の45%を占める0歳児には、「望まぬ妊娠」「10代での妊娠」「妊婦健診を受けていない」といった傾向が見られます。産婦人科医会は、0歳児の虐待死を防ごうと、高校での性教育に取り組み、また1人で悩まず相談して貰えるよう導くための取り組みとして、薬局で妊娠検査薬を買う人に、医会や保健所の相談窓口が書かれたパンフレットを配ると共に、妊娠に悩む女性への支援を医療関係者に促すマニュアルを作成しています。
「育児支援」 3人から4人に1人と言われている育児不安。これを解消するにはほかの親との出会いの場を提供することと、夫の配慮が必要です。これらによって精神的な安定を取り戻させます。虐待は病気と一緒で、こじれると非常に解決が難しくなるので、早期に手を差し伸べることが大切です。育児不安を抱える母親の不安を早期にキャッチし、必要な援助をするための制度を紹介します。 定期的な妊婦健康診断や乳幼児健康診断を受診しない母親が出ないように、市町村保健センター等においてはきめ細かなかかわりをもとうとしています。 保健婦や助産婦らが、生後4カ月までの乳児がいる全ての家庭を訪問して、子育てに関する情報を提供し、虐待の兆候が見られるときは、児童福祉関係機関に連絡する、乳児家庭全戸訪問(こんにちは赤ちゃん)事業が行われています。 乳児から小学生の子どもにかかわる専門機関、保育園、幼稚園、小学校、病院・医院の小児科・歯科等においても、虐待の予防と早期発見に努めています。虐待の兆候が疑われれば、親への個別的フォローにかかわりつつ、必要があれば児童相談所へ通告する義務があります。 地域の子育て支援センターなどでは、子どもと親が交流できるひろ場を設け、子育ての相談などの援助を行い、孤立した家族をつくらないよう、困ったときには気軽に利用できる相談体制づくりを進めています。同種の民間の子育てサークルもありまする。 地域においても、民生・児童委員や自治会住民等で「地域の子どもは地域で育てる」という姿勢をもって子育て中の親と子どもを支援し見守っています。上記のような体制をどんどん拡大していく必要があります。 (この原稿を作成するにあたっては、朝日新聞の記事及び才村純氏と佐々木光郎氏の人権のひろば39号、79号の論考を参考にさせていただきました。)
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