本日は、深刻化している児童虐待についてお話しします。 平成23年度に児童相談所が対応した児童虐待の数が、21年連続で過去最多を更新しました。その数6万件。別な統計では、平成22年度、保護が必要な重度の虐待が4.5万件、支援が必要な中度の虐待が45万件、教育啓発が必要な軽度の虐待が450万件、そして虐待予備軍は保護者全体の3分の1を占めると言っています。 新しい情報で、警察庁が発表した今年1月〜6月の上期の児童虐待状況は、警察が事件として対応したものが昨年同期比62%増の248件、被害を受けた児童は同56%増の252人、逮捕・送検された保護者らは同56%増の255人、いずれも統計がある2000年以降では最多です。 このように連続して過去最多を更新するのは、社会の関心が更に高まり、潜在化していた部分が顕在化したためとみられます。
虐待を防止するにはどうしたらいいのかについて考えてみたいと思います。 <虐待としつけの違い> 虐待としつけは全く次元が異なるものです。児童の心身の成長、発達に著しく有害な影響を及ぼす育児態度か否かで分かれ、親の愛情の有無、動機には関係がなく、子どもに良かれと思ってしていても結果的に子どもに有害になれば、それはしつけではなく虐待です。 <種 類> 身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクトの4種です。ネグレクトとは、養育の拒否・怠慢のことで、病院に連れて行かない、乳幼児を家に残して頻繁に、あるいは長期に外出する、風呂に入れない、などもこれです。 身体的虐待とネグレクトがそれぞれ4割弱、心理的虐待が2割余り、性的虐待は表面化せず実体は分かりませんが、実父や養父によるものが多いそうです。 被虐待児の年齢は、乳幼児が4割強、小学生が4割弱、中高生が2割弱。 虐待は子どもに、身体的、情緒的、行動的に極めて深刻な影響を与えます。年間約100名が死亡し、それ以上の数の子どもが失明などの重度の障害を負っています。小さいころから繰り返し罵倒され邪険にされ続けたため、自分は価値がなく、生きていても仕方がないと、自分を尊ぶ感情が低い子どもが多い。子どもの行動への影響としては、家出、覚せい剤、盗み、恐喝などの非行に走る比率が高い。非行歴のある子どものための施設では6〜7割が被虐待児です。 <虐待する親の要因>を分析すると、 親自身が生活上、精神上困難な問題を抱えており、それらの過大なストレスが子どもに向かいます。 @経済環境が悪い、A夫婦関係が悪い、ドメスティックバイオレンス、離婚 B母親の性格や精神疾患等の身体的・精神的に不健康な状況から起因するもの、子供に愛情が湧かない等C父親が子育てに協力しない、D核家族化で地域社会から孤立した家族、そのため身近に相談できる人や育児の手助けをしてくれる人がいない、CやDは子育ての不安や負担から虐待に至っています。E病人の看病や介護等によるストレス、F「虐待の世代間連鎖」、即ち虐待を受けた子が親になって我が子を虐待する割合は3割程と言われています。G最近では「望まぬ妊娠」による出産が大きな社会問題になっています。 <子ども側の要因> 発育の遅れが約3割を占めています。ただし虐待が先か発育の遅れが先かは不明です。癇のきつい子も親の怒りを引き出しやすいと言われています。 <親子関係の要因> 一番多いのが幼児期の分離体験で、1ヵ月以上幼児期に親子が離れて暮らすと23%に虐待が見られたそうです。頭では我が子と分かっていてもなかなか愛情がわかないようです。 次が、両親が離婚してその後再婚。と言っても血のつながらない家族であっても大半は良好な環境を保っています。統計的に1つの危険因子といったところです。 <虐待で死亡した子ども> 平成23年度虐待で亡くなった子は98名。但し無理心中47名を除くと51名で、51名のうち0歳児が45%で、「望まぬ妊娠」が原因と思われます。3歳までに84%が亡くなっています。死なせた加害者は実母が59%、実父が14%。身体虐待が原因の死が63%、ネグレクトによる死が28%です。 (この原稿を作成するにあたっては、朝日新聞の記事及び才村純氏と佐々木光郎氏の人権のひろば39号、79号の論考等を参考にさせていただきました。)
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